古文書のスケッチ画像『𥆞腦之図』(和紙に墨描きの同心円状・眼球模様)
【図3】明王の滝。

他地域における類似の信仰形態

新潟県の明王の滝(図3)近辺に伝わる『𥆞腦様』の伝承は、一見すると極めて局地的な信仰に見えるが、日本国内のいくつかの山間部や鉱山周辺においても、極めて類似した伝承が確認されている。

例えば、中部地方の某鉱山地域では、かつて「石の断面に浮かぶ模様が人間の眼球の形に変化し、見つめた者の思考を乗っ取る」とされる古い言い伝えが存在していた。

これらの伝承に共通するのは、「石の光や色による精神への侵蝕」という現象である。

伝承に共通する事柄

民俗学的な調査データから導き出された共通項として、以下の3点が挙げられる。

1点目
いずれの地域でも、石や鉱物に対して直視することを厳しく禁じる忌み名が付けられていた。

2点目
近代化や開発の波に伴ってその信仰が急速に隠蔽・風化され、後世には「縁起の良い宝石や鉱物の話」へと意図的にすり替えられている。

3点目
特定の光線条件や環境下において、かつて狂気を引き起こしたとされる「作用」が一時的に再活性化する危険性が密かにささやかれている。

考察

『𥆞腦様』をはじめとする一連の伝承は、単なる迷信や古い怪談として片付けることはできない。

もしかしたら、この列島の地底深くには、人間の精神を狂わせる巨大な「何か」が存在しているのではないだろうか。

地底より露出した「何か」は、大気に触れた瞬間から作用が減衰し、時間の経過とともにその力を失っていく。

そのため、シグナルが完全に消失し尽くすまでのごく短い期間に起きた現象のみが局所的に伝わり、それを『𥆞腦様』のような限られた地域だけの伝承として語り継ぐことしかできなかったのかもしれない。