— 昭和61年度地質構造・鉱物標本解析手記より抜粋 —
本地域において古くから採掘・加工されてきた「瑪瑙」と、滝つぼ上流の祠に祀られていた「𥆞腦様」は、外観上の同心円状模様(眼球状構造)において酷似しているものの、結晶構造および成分分析において全く異なる対象である。
かつて地場産業として栄えた瑪瑙は、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする一般的な玉髄である。
一方、『𥆞腦様』の原石構造を分光分析した記録によると、通常のケイ酸塩鉱物には見られない特殊な微細格子構造と、特定周波数の微弱な光を吸収・保持する異質な物理特性が確認されている。
集落の古い記録によれば、明治から大正期にかけて「𥆞腦様」による精神変容や知覚異常被害が相次いだ際、地域社会や地主層は風評被害や土地の価値下落を極度に恐れた。
そのため、当時町内で盛んに産出されていた「宝石としての瑪瑙」の名を意図的に被せ、民話を「目や健康に良いご利益のある石」へと改変・すり替えることで、外部や後世への隠蔽を図ったとされる。
「瑪瑙様」という温かい名前は、忌み名『𥆞腦』の恐怖を覆い隠すために作られた偽りの記号に過ぎない。
地質・物理解析データが示す通り、かつて強い波長を放ち脳の領域に作用していたとされるエネルギーは、昭和中期までにほぼ完全に放散・放出され尽くしている。
昭和60年代以降の計測において、該当原石からは当時ほどの特殊な波長や放射線が検出されることはなく、現在の『𥆞腦様』は「ただの石の塊」に過ぎない。
実地調査にて撮影した廃れた𥆞腦様の像の写真を見ても分かる通り、信仰は衰退していることが想像できる。
しかし、日光の直射などの特定波長の光が加わることで、一時的に励起状態になる性質があり、その状態で長期間暴露されることにより、精神変容を引き起こす可能性がある。